欲巣の決戦場にて

報告書番号:2011-12-10

魂での地図作り

コボルトの一撃で魂状態となってしまった私は、この機会を利用して地図を作れるのではないかと考え、早速行動に移した。
右手を壁に置き、壁伝いに進んでいく。ある程度進んだらMapを開いて自分の足跡をなぞるようにして線を地図に書き込んでいくという単純な作業だ。
こうして大雑把ではあるが欲巣の地図が完成した(報告書の地図を参照。しかし地図には夢の欠片の場所も載っているので閲覧には注意されたい)。
魂で探索を続けているときに欲巣の深奥の広い一帯で奇妙な音がしたのが印象に残っていた。おそらくあの場所が最終的な目的地になるのだろうと予感できる。
後は魔物に気をつけながら夢の欠片を探すだけなのだが・・・・・・。

欲巣の安全ルート

地図作りを終えた私は女神像で復活すると、次は夢の欠片を探しに向かう。
もちろん、魔物に見つかることは死を意味するので、慎重に行動しなければならない。

私は夢の欠片と同時に魔物に見つからずに進める安全な道も探しながら進んでいった。
左手方面から進んでみたり、柱の死角を利用しながら正面を進んでみたり、右手方面から進んでみたりと色々と試す。
私の作った地図が正しければ、欲巣は二つの細い通路を境に三つの大きな広間から成り立っている。 次のエリアへ向かうには通路を抜けなければならないのだが、この通路の手前には魔物が複数で周回している。
まず第一エリアの進み方だが右手側の壁に沿って進めば魔物に見つかることはない。
やがて第二エリアへ進むための通路が見えてくるがそこの番人をしているのは二人のコボルトだ。
コボルトは通路の手前を一定間隔で周回しているのでこちらに背を向けている隙に通路を進んでしまえば気付かれることなく簡単に通り抜けられる。

第二エリアも右手側の壁に沿って進むというのは同じなのだが、通路までの道中で二度か三度ほど魔物の周回地点がある。
ここも第一エリアのコボルトと同様、背を向けているときに進めば気付かれずに先へと進める。
難しくなるのは第三エリアへ進むための通路付近からだ。

詳細は省いているが、この迷宮の探索にあたって30回近くも死亡してしまった。その死亡原因の5割はこの第二と第三通路を結ぶ通路にあったと思う。
それは色々な要素が絡み合った結果なのだが、まず、私の地図によれば壁に沿って進んでいけば第三エリアの奥まで進めるはずなのだ。
それなのに気が付くとC5にある瓦礫の山に着いてしまう。これが一度だけではなかった。
最初はうっかりしていたと思ったし、二度目は何か勘違いしていたと思った。三度目が起きてとうとうおかしいと思い始めた。
それで今度はしっかりと地図を見ながら進むも、なぜか通路を通りこしていて、気が付くとC5の瓦礫の山の前へきている。
何を言っているのかわからないと思うが、私にも何が起きているのかわからなかった。 これはもしかして魂の状態でなければ進めない通路かなにかなのだろうか?
私の頭にそんな考えがよぎったが、これは正解ではなかった。
答えはすごく単純なもので、単に私が通路を見落としていたに過ぎなかった。

なぜこんな見落としをしてしまったのかというと、一つは私の書いた地図が関係していた。
大雑把に作りすぎた地図の通路は、実際の通路よりも大分幅が広くなっていて、自分の書いた地図を疑うことを忘れていた私は「こんな大きな通路、見落とす筈がない」と思い込んでいたのだ。
見落としていたなんていうと私が酷い間抜けに見えるかもしれないが、本当にわかり辛かった。この事に気が付くまでに10回以上は死んでいたと思う。
それに、壁に沿って進み、尚且つ通路の前を周回している魔物の動きに注意していた私の目線からだと、細い通路は視界に入らなかったのだ。これは実際に現地で壁伝いに進んでもらえれば理解してもらえるものと思う。
余談だが、もうこの通路を見落とすことはない。よく観察すると通路のある壁には目印に二つの燭台が備えつけられているからだ。

そしていよいよ第三エリアに進めるようになったと思ったらすぐに次の難所が現れた。
通路を抜けて第三エリアに入ったすぐの場所でヘヴィコボルトとスパンキー(小鬼)の群れが待ち構えていたのだ。
通路の謎が解けて半ば放心していた私に、コボルトとスパンキーの群れが覆い被さってくる。
希望の光の先に絶望の淵を用意しているなんて・・・・・・。
しかし悪鬼たちに蹂躙されながらも、私の胸の内の絶望感は次第に悦楽へと変わっていきつつあった。
・・・・・・。

今日だけで何十回目となる女神像での復活を遂げると、私は棍棒を下げているベルトをきつく締めなおす。
どうやらあまりの酷い難易度に私はすっかり魅せられてしまったらしい。

あれから数度挑んでようやく第三エリアへの進み方がわかってきた。
まず第二エリア側で魔物の隙を見て通路へ入るとそこで一旦立ち止まる。すると先に見える第三エリアの入り口周辺をコボルトとスパンキーの群れが周回しているということがわかるので背を向けた時を狙って第三エリアの右手側に進む。おそらくだが左手側に気付かれずに進むことは不可能か、もしくは大変難しいと思う。
無事に右手側に抜けることができれば後はこれまで通り壁伝いに進んでいくだけだ。同じように道中で魔物の周回地点があるがこの通路を越えられるのであれば何の苦労もないだろう。

壁伝いに進んでいくと、ダークゾーンがなくなり眩しさを持った一帯にでる。ここは魂の時に訪れた奇妙な音のする一帯でもあった。
私の予想通り闇天使の像があり、ここで集めた夢の欠片を使うことで決戦場へ行けるようだった。
この時点で私は夢の欠片を三つ所持していて意気揚々と挑もうとするが、中に入ることは出来なかった。
どうやら数が足らないらしい・・・・・・。

最終的に夢の欠片は全部で五つ必要になるのだが、この欠片探しは本当に大変だった。
通路の謎や通路で待ち構える魔物といったものとは比にはないくらいに難しかった。
最後の欠片を見つけたときは嬉しさのあまり声を漏らしてしまったほどだ。幸いにも魔物たちにその声は聞こえていなかったようで襲われることはなかったけれど。

欲に巣を張る魔物

夢の欠片を五つ揃えて闇天使の像へと戻ってくる。
さすがにこの五つで決戦場へと進めるはずだ。五は人の指と同じ数、黒衣の者も五人、きっと五つで入れるに違いない。
私の心配をよそに決戦場へと進めることができた。
さすがに五つで無理だったら今日は諦めるつもりだったので本当に良かった。

しかし今回は魂の間に地図を作るという方法を思いついて外周だけとはいえ地図が作れたからよかったものの、もしこの方法を思いつかなかったら難易度はどのように変化していたのだろう? 通路のような、地図を作ったことで迷う原因となってしまった場所もあったけれど、それを差し引いても相当簡単になっていたのではないだろうか。
この魂での地図作りは今回限りにしておこうかしらと少し悩む。
とりあえず、心を完全に砕かれるような絶望を味わうほどの迷宮に出会うときまで保留にしておこう。

決戦場に入ると通路を進む、一体何が待ち受けているのか・・・・・・。
私は支援型プリーストだというのに単独戦にはいささか自信があった。冒険者ギルドが得た情報では支援プリーストでも十分戦える相手だと聞いていたので不安はほとんどない。
広間に出ると巨大な蜘蛛の魔物アトラナートが現れた。これが欲に巣食う魔物の親玉ということか。
棍棒で殴りかかると思わぬ事態に驚く。

「え? 2?」

思わず口に出してしまうほどだった。こちらの攻撃は2しか与えられない。
見間違いかと思ってもう一度殴ると変わらず一桁しか与えられない。
しかし向こうの攻撃は50ものダメージが出ている。
後ろに回りこんで背後に攻撃を加えてみるも大して変化はない。
私は瞬時に頭を切り替える。魔物は広間に出てすぐのところで襲ってきて、私はすぐに通路へ誘い込んだという状況だった。
広間に何か仕掛け(火炎装置のような)があってそこに誘い込むのでは?
そしてすぐに広間へと走りこむ。
何か、何かあるはずだ。
しかし何もない。
その瞬間、私の背中から、嫌な、黒い囁きが登ってくるのを感じた。

”私はこの魔物には勝てないかもしれない”

一度それに出会ってしまうと逃げ出すことはできない。
私には、もう先程までの攻略してやるという意志はなく、無様に逃げ回るだけだった。
やがて棍棒を握る力も失い、蜘蛛の糸に捕らえられていく。
いや、それ以前に囚われていたのだろう。自らの、絶望するような迷宮を味わいたいという欲に。
欲に囚われ、この迷宮が適正レベルでないなどと思いもつかなかったのだ。
薄れゆく意識の中、欲望の主の本当の姿を知ったところで、それは遅すぎる話だった・・・・・・。


愚かな私のドゥム・スピーロウ・スペイロウの探索記録はここで一旦中断され、次の報告書から再びデルティス大蔵室の探索記録となる。
ここまで時系列順に読み解いてくれたあなたなら報告書番号2011-12-11に目を通すのが良いだろう。

ドゥム・スピーロウ・スペイロウ、探索の記録一覧へ戻る

報告書の先頭に戻る
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。