貯水区画へ

報告書番号:2011-12-30

貯水区画の洗礼

「――ひうっ」
アリア川貯水窟に足を踏み入れた私の第一声は悲鳴に近いものがあった。恐怖がもたらすそれではなく、何か嫌な感触を味わってしまったときに出るようなあれだ。私はおそるおそる足元に目をやると私達ノームやドワーフほどの大きさもある甲虫の死骸――その一部を踏みつけてしまっていた。この際踏みつけたことはどうでも良いのだがそのおぞましい姿に卒倒しそうになる。しかし私は賢いからすぐに目を向こうにやって見なかったことにした。まったく、チコル城に戻りたい気分だ。あの儚げな曲をまた聴いていたい・・・・・・。

チコル城に思いを馳せようとしたら間違えてゼームテール様の顔を思い出してしまった。
そうだ。私はまた魔法局から頼まれごとを引き受けていたのだ。アリア川貯水窟を調査中の調査団の手助けをし、ブルスボーンという魔物を退治するよう言われているんだった。貯水窟はじめじめとしていて空気も悪そうだし、早く用事を済ませて出て行きたい。それに加えてここの魔物はいやらしいし。
巨大蛾のブラッドサッカーは私の頭上を飛び交っていてこちらの武器は届かず空振りばかりだ。時折小馬鹿にするようにこちらの隙をついて攻撃を仕掛けてくるのだから気の短い私とは相性が悪い。
暗くて遠目なのでよくわからないが、入り口からしばらく進んだところでそのブラッドサッカーが2〜3匹は見える。
ギルドからあの巨大蛾を討伐するようには言われていなかったし、私は慎重に、近づかないよう迂回して進む。
壁際に沿って、・・・・・・少し汚い印象があるけれど側溝を通ろう。

ずぼずぼずぼ!! 
側溝に溜まった水場に足を踏み入れた瞬間にそれが私を襲った。
ええ!? なんで・・・・・・。
浅いと思っていた側溝は想像以上に深く、またそこに溜まっていた水は即効性の強い毒物と化していたのだろうか、私は瞬く間に息絶えてしまった。 周りには私と同じように側溝に嵌ってしまった冒険者の変わり果てた姿がそこにあった。これから私も長い時間をかけて、彼等と同じような姿に、なっていくのだろうか・・・・・・。

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