元大富豪の冒険者とショコラティエールに関った私の憂鬱 第一幕

報告書番号:2012-02-11

どうやらイルファーロの町にもこの季節になるとショコラティエールがやってくるようだ。故郷にいたときは渡すことよりも貰うことの方が多かったことを思い出す。今年は渡す側にまわってみるのも良さそうだ。とはいっても・・・・・・。

冒険者としてこの町に来てから私はほとんどというか全てソロで潜ってきたためか長い付き合いになるような人がいない。一人いるにはいるけれど剣士殿はなにやら魔法局の方で研究に勤しんでいて会えそうにない。時々手紙が届くくらいだ。

なぜカートさんの顔が浮かんでくるのだ。

・・・・・・いや、いいのだ。カートさんもソロで迷宮に挑み、倒れ。私もまた、ソロでウォッチマンに挑み、敗退したんだ。彼と私は似たもの同士。彼にチョコを渡すことができれば、私はソロでウォッチマンを倒すことを諦めずにいられる気がするのだ。それに・・・・・・。カートさんにも伝わるだろう、あなたに友人はいなかったけれどチョコを渡す人間はいるのだと。

カートさんにチョコを渡すことを決心すると次に肝心なのは何と言って渡せばいいのかだ。本心のままに渡すというのは照れがでてしまう。何か上手い口実はないものだろうか・・・・・・。

違う!!

そうだ! カートさんは元大富豪、つまりはお金持ちだ。チョコのお返しに高価なものを貰えそうだから、という理由にすれば大丈夫だろう。よし、私は早速カートさんの目撃情報を集めるためにギルガメッシュの酒場に向かった。

続々と届く情報。しかしそこはどこも、今の私ではたどり着くことが出来ない夜空を泳ぐ星たちよりも遠い世界。けれど・・・・・・私は諦めない!


途中、嬉しいことにカートさんを探すのを手伝ってくれる方まで現れ探索は続いた。そして・・・・・・。 ついにカートさんの姿を見つけることができた。しかしそこはスラム。陽の当たらない道を歩くことを選んだ荒んだ者たちの住む世界。とても恐ろしい場所だ。けれど私はチョコを渡すことを諦めはしない! チョコを受け取ってください、カートさん! カートさんの一言とともに周りから野次が飛んでくる。しかしそんな野次など私の剣で払い落として見せよう! 飛び交う魔法! 剣撃! そして野次! その全てをくぐりぬけ私はカートさんにトレードを申し込んだ! おわかりだろうか? なけなしの不思議なカカオ3個を渡し、手渡されたのは蝿の死骸99個だった。
・・・・・・。

はっ。
(これはひょっとして?!)

蝿の死骸は魂の時に天秤にささげることで蘇生率を若干だけど上げることができる。これはカートさんからの声援だ! 蝿の死骸を食い繋いででも生き残れ! 私の果たせなかったソロでの突破をお前が果たしてみせろというカートさんの声援! わかりましたカートさん。あなたの言葉が! 心でなく物で理解できました。 そして今度はちゃんとチョコボックスを持ってくることを告げてその場を去った。
こうして、私のチョコボックスを作るための少しだけ長い旅が始まった。

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